11月3日午前中に銀座・靖山画廊で開催されていた木工作家の福田亨さんの個展「-水のかたち-」へ出かけた。早く行きたかったのだが、その前の週末は父の四十九日の法要に帰省していたため、最終日になってしまった。彼の作品に初めて出会ったのは、今年(2023年)6月に長野県立美術館で開催された「超絶技巧、未来へ!明治工芸とそのDNA」展である。その特別展は、ネットサーフィンをしていてたまたま見つけ、妻と息子二人を誘って出かけた。
特別展の目当ては別の作家だったのだが、福田さんのエゾヒメギフチョウの作品を見て、一目で魅了されてしまった。ただ、その時は、彩色作品だと思っていたのだが。あとで、それが彩色していない天然木を使った木象嵌だと知り、さらに驚きファンになってしまった。彼の作品は精巧に昆虫を模しているのだが、同時に昆虫に対する愛情を感じる。私が幼少期に蝶を集めていたことはさきに書いたが、その頃感じていた蝶の自然な動きを彼の作品から感じるのだ。
蝶は翅を大きく広げて表(おもて)面が見えるように展翅して、標本にする。私は翅の裏側も好きで、裏面が見えるように標本を作ったりしていた。また、翅を閉じていたり、少しだけ開いた蝶に妙に魅力を感じる。たぶん、その姿が自然に近いからだろう。彼の作品は、それをうまく表現しているのである。彼も翅の裏側により魅力を感じるのかもしれない。
ともかく、彼の作品を見ていると、蝶に魅力を感じていた幼少期の感覚、感情を思い出すのである。今回は福田さんと少しお話もできて、とてもうれしかった。