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就職活動のオワハラ

 ちょっと前だが、「就活オワハラ」なる記事を見つけて、私の感覚が狂っているのかと驚いたので、紹介してみなさんからも意見を求めたい。

 学生にとって「就職」が最大の関心事で、大学や大学院の勉学より重要であることは残念だが理解している。企業にとっても優秀な新入社員を確保することは、その会社の将来に関わる重要な問題である。大学教員にとっても、研究室の学生が希望する就職先に決まるのはうれしいものである。就職先がなかなか見つからず、日々暗くなっていく学生を見るのは本当に辛い。企業からお断りの連絡が続くと、人格を全否定されたような感覚をもつようで、見ていて忍びない。一生懸命実験をやってきた学生にこの傾向がある。

 以前は希望する企業の知り合い(同級生や研究室出身者など)を紹介することもあったが、この10年あまり紹介を希望する学生はいない。みんなエントリーシートをせっせと書いて企業への売り込みから始めている。企業の知り合いを紹介する条件として「その企業から内定をもらったら、就職活動は終了すること。他の企業から先に内定をもらったら、必ずお断りの連絡を入れること」を約束してもらっていた。また、「内定をいくつ取っても、就職するのはひとつの企業だけだよ。複数の内定をキープすることはその企業に対して失礼だし、就職活動に汗を流している仲間の迷惑になるんだよ」と話していた。

 ある時学生から「今日行きたい企業から内定をもらえたので、明日からは楽な気持ちでより良い企業を探すための就職活動をします」と言われ、「分かった。内定した企業の知り合いに、内定を出したようだが、彼女はまだ別の企業を探すようだから、そちらももっと優秀な学生がいたらそちらに乗り換えたら良いですよ。と連絡して良いか?」と尋ねた。学生からは「分かりました。就職活動は終わりにして、修士論文の研究に励みます」との返事をもらった。完全に「オワハラ」である。これは許されないのだろうか? 別に修士論文のための研究をやらせたかったわけではない。

 学生が内定の約束を守らないことに世の中は何でこんなに寛容なのか、私には分からない。就職活動は、学生にとって社会と接触する最初の機会であり、約束を守ることが重要であることをなぜきちんと教えないのか? 企業には内定の約束は絶対守ることを強要するのに。

 また、内定企業の数を争うことに何の意味があるのだろうか? 内定をたくさん取った学生が優秀だとはとても思えない。嘘つきで話がうまいだけのように思うのだが。

 私は古い人間で、感覚が狂っているのだろうか? 最近、不安になっている。

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記事の執筆者と略歴

この記事の執筆者

片岡宏誌のホームページ 片岡 宏誌 農学博士
                                               
1981年 東京大学 農学部 農芸化学科 卒業
1983年東京大学 大学院農学系研究科 農芸化学専攻 修士課程 修了
1986年東京大学 大学院農学系研究科 農芸化学専攻 博士課程 修了(農学博士)
1986年 Sandoz Crop Protection 社 Zoecon Research Institute(アメリカ・カリフォルニア州)ポストドクトラルフェロー
1988年 日本学術振興会 特別研究員(東京大学)
1988年 東京大学 農学部 助手
1994年 東京大学 農学部 助教授
1999年 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授
2024年 東京大学 定年退職

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