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103万円の壁と納税システム

 2024年10月27日投開票の衆議院選で自民党が大敗して、公明党を合わせても与党が過半数を確保することができなかった。野党第一党の立憲民主党や第二党の維新より国民民主党の躍進と挙動に注目が集まっている。「103万円の壁」を掲げて、手取り収入を増やそうというアピールが功を奏したようだ。本当に手取りが増えるのだろうか? 将来を考えても大丈夫な施策なのだろうか?「風吹けば桶屋が儲かる」話のうち「風吹けば眼医者がはやる」のところまでしか見ていない気がする。

 最近の政治家や政党は目先の利益を訴えるものばかりで、将来生じる問題点やデメリット、考え方を明確にしないで政策提案している。当選しなければただの人になるので、有権者の票獲得に目が向き、国民の将来など考えていない気がする。政治家は自分のお金を配っているような表現をするが、予算の分配比率を決めているだけで、身近で投票してくれそうな人に分配が多くなるようにしているだけだ。借金(国債)は1,100兆円を超え、2024年度の当初予算は10分の1の112兆円である。年間予算を全く使わないで10年間返済に充てないと返しきれないことになる。国債償還のために新たな国債を増額して発行することで予算案を作ることが続いている。形の上では成り立っているが、どう考えても将来の人達に負担させることを前提に、現在の人が借金で贅沢な暮らしをしていることになる。「103万円の壁」の向こう側には「106万円の壁」、「130万円の壁」、さらに「150万円の壁」があるそうだ。また、月々の納税減額には「基礎控除」「扶養者控除」「配偶者控除」「特定扶養控除」など「控除」の名が付く項目がたくさんある。

 10年くらい前から医療費控除などを受けるために毎年確定申告を行っていて、自分の税金額(社会保険料も含む)を見ていたはずだった。ところが、退職前後で「介護保険」「健康保険料」「住民税」を自分で納付する(振り込む)ことになり、その金額に愕然とした。給与明細に書かれていたはずだが、その金額を月々納付していた認識は無い。また、雇用主が半額負担することになっているものは、本来受け取るべき給与から雇用主が天引きして納付していたのだと分かった。6月納付期限の全額を振り込むことは年金生活者には難しく、区役所に電話して一番高額だった住民税の納付をしばらく猶予してもらうことにした。

 私はアメリカで一度だけ確定申告をしたことがあるが、日本のものと比べて極めて簡単で、初めて申告する外国人の私にとっても問題なかった。アメリカではほぼ全ての労働者が確定申告をしていた。日本もそろそろ雇用主が行う年度末調整などに依存しないで、労働者がみずから確定申告を行うシステムへ移行してはどうかと思う。そうすれば納税感覚を普段から身につけることが出来る。雇用主の半額負担もなくして一旦従業員へ支払い、本人が直接納付する形(事務処理は雇用主)にしてはどうかとも思う。また、様々な控除項目は全てやめて、確定申告の申請に基づいて相当額を還付するのはどうだろうか? 手に渡る額は変わらず、納税感覚が身につくように思う。納税していることを感じることで、税金の配分比率を決めている政治にも興味をもち、政策を厳しく監視するのではないだろうか。今回の「103万円の壁」の提案は、税と社会保険について国民に関心を持たせた功績は大きいと思う。

 10(あるいは最長50)年後から始める納税システムを3(最長10)年間かけて抜本的な改定案を作成し、5(最長40)年後から徐々に移行措置を行うのはどうだろうか? 来年か再来年から変更しようとすると、目先の利害に目を奪われて、将来的にも通用する公平なシステムを作ることが出来ないように思う。政治家もみずからの損得(得票)に煩わされない良い案を考えられるのではないか。

 さらに、政治家も宗教家も全収入に対して相応の税金を納税し、政治活動や宗教活動と認められる経費については確定申告で還付することにすれば、一般人と同じになり公平感を与えるのではと思う。政治と宗教は特別な存在で、ある種の霊感商法的手法で税逃れをしていると思うのは私だけだろうか?

 そんななか、国民民主党党首の不倫が報道された。プライベートは別だと言うかもしれないが、そんな人格の人に「きちんとした政治は出来ないだろう」と思うのは私だけだろうか?

103万円の壁と納税システム
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記事の執筆者と略歴

この記事の執筆者

片岡宏誌のホームページ 片岡 宏誌 農学博士
                                               
1981年 東京大学 農学部 農芸化学科 卒業
1983年東京大学 大学院農学系研究科 農芸化学専攻 修士課程 修了
1986年東京大学 大学院農学系研究科 農芸化学専攻 博士課程 修了(農学博士)
1986年 Sandoz Crop Protection 社 Zoecon Research Institute(アメリカ・カリフォルニア州)ポストドクトラルフェロー
1988年 日本学術振興会 特別研究員(東京大学)
1988年 東京大学 農学部 助手
1994年 東京大学 農学部 助教授
1999年 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授
2024年 東京大学 定年退職
2024年 東京大学 名誉教授

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