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最終勤務日が終わった

 東大教授としての最終勤務が終わった。特に感慨はないが、最後はとにかく忙しかった。やっとその忙しさからも解放されることになる。
 有給休暇を取って温泉でゆっくりしようなどと考えていたのだが、とてもそんな余裕はなかった。退職するためには、いかに多くの書類作成が必要かを知った。一生に一度なので要領は分からないし、今後の生活に支障がないようにと考えると慎重になる。不合理や不条理に怒りを覚え、クレームを付けたらさらに必要な書類と事務作業を課せられた。波風立てないように、これまでみんなおとなしく従ったのだろう。世の中デジタル化されているのに、なぜアナログ的な処理しかできないのか不思議である。思わず事務職員の天下り先(仕事)確保のためなのかなどと思ってしまった。

 一番時間を使ったのは保管していた書類や書籍の整理と廃棄だった。ともかく量が多かった。機密書類と判断してシュレッダー処理に回したが、今となっては機密書類ではないような気がする。書籍はリュックに数冊入れて、半年近くかけて毎日自宅まで運んだ。それを収納するために本棚を2つ新たに購入したが、それも一杯になった。今本棚を見ると半分くらいは処分しても良かったように思う。大学で処分しておけば良かった。
 教え子達の学位論文の扱いにも困った。この際処分することにしたが、今後役立ちそうなものはPDF化することを考えた。残りはシュレダー処理してもらうように言い残し、その仕分けをした。実験ノートは保管義務があるため、段ボールに入れて研究室の隅にでも保管してもらうことにした。これらは中途半端な状態で残すことになってしまった。
 冷蔵庫やフリーザーに残してあった(学生達の)サンプルや試薬は、基本的に処分することにした。将来使われないだろうと思いながら、入手が難しいサンプルは残しておいた。
 昔の数千枚のスライドの全てに目を通し、重要な250枚くらいを選んだ。デジタル化しておこうと思うが、本当に使う機会があるのだろうか? 長い間探していたスライドが見つかり喜んだが、私にとって意味があるだけで残しても価値がないようにも思う。

 ともかく、最終勤務が終わり、鍵も全て返却してホッとしている。3月はあと2日あるが、休日なので明後日から温泉に出かけようと考えている。

退職
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記事の執筆者と略歴

この記事の執筆者

片岡宏誌のホームページ 片岡 宏誌 農学博士
                                               
1981年 東京大学 農学部 農芸化学科 卒業
1983年東京大学 大学院農学系研究科 農芸化学専攻 修士課程 修了
1986年東京大学 大学院農学系研究科 農芸化学専攻 博士課程 修了(農学博士)
1986年 Sandoz Crop Protection 社 Zoecon Research Institute(アメリカ・カリフォルニア州)ポストドクトラルフェロー
1988年 日本学術振興会 特別研究員(東京大学)
1988年 東京大学 農学部 助手
1994年 東京大学 農学部 助教授
1999年 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授
2024年 東京大学 定年退職

コメント一覧 (2件)

  • お疲れ様でございました。

    「日本農学賞」おめでとうございます。

    本日の「日本農学大会」でのご講演、拝聴したかったです。

    「退職の事務処理」人生で初めてのことだし、今後の生活にも関わることでもあり、慎重にならざるを得ない、同感です。

    仕事に使ってきた様々物、自宅の2部屋をまだ占領したままです。

  • 樫宿洋江さん:

    昨日、無事授賞式と受賞講演を終えてホッとしています。近いうちに「日本農学大会」の記事を投稿する予定です。やっと気持ちに余裕ができました。
    私も大学から持ち帰ったものの整理を始めます。

    また、一般の方からの初めてのコメント、ありがとうございます。
    退職は人生に一度しか経験しない人が多いことから、問題点があっても表に出ないことがたくさんあるように思います。そのために改善されないままになっていると感じました。
    後に続く人達のためにも、何を問題だと感じたのか、どうしたら良かったか(どうして欲しかったか)など、退職に関わる問題を、みなさん コメントしてみませんか?
    直ぐには改善されないと思いますが、各自で気をつけることができると思います。
    また、関係者がコメントを見てくれて、アドバイスしてくれたり、対応してくれる可能性もあります。

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