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羽化ホルモン

 羽化ホルモン(EH)は、昆虫の最終脱皮である蛹の殻から成虫が羽化する行動を誘起するペプチドホルモンである。例えば、セミは早朝に、ある蛾は夕方に羽化するのは、EHが血液中へ放出されるタイミングが一日のうちいつか決まっているためである。EHは、ワシントン大学のJ. Trumanによって発見されたが、その構造が明らかになったのは1987年のことである。鱗翅目昆虫のEHは62残基のアミノ酸からなるペプチドである。

 近年、EHは胸部に存在するインカ細胞で合成されるETH (ecdysis triggering hormone)の分泌を促進し、ETHが神経系に作用して脱皮(羽化も)行動を直接誘導することが示されている。また、ETHは脳のEH産生細胞に作用してEHの分泌を促進することも知られており、EHとETHが互いに分泌を促進し合うことで、脱皮(羽化)行動が一気に進むと考えられている。

羽化ホルモンの構造
羽化ホルモンの構造
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記事の執筆者と略歴

この記事の執筆者

片岡宏誌のホームページ 片岡 宏誌 農学博士
                                               
1981年 東京大学 農学部 農芸化学科 卒業
1983年東京大学 大学院農学系研究科 農芸化学専攻 修士課程 修了
1986年東京大学 大学院農学系研究科 農芸化学専攻 博士課程 修了(農学博士)
1986年 Sandoz Crop Protection 社 Zoecon Research Institute(アメリカ・カリフォルニア州)ポストドクトラルフェロー
1988年 日本学術振興会 特別研究員(東京大学)
1988年 東京大学 農学部 助手
1994年 東京大学 農学部 助教授
1999年 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授
2024年 東京大学 定年退職
2024年 東京大学 名誉教授
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