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再生の道公認候補予定者シリーズ「教育:不登校」

 私は大学の教員を35年間勤めました。主な仕事は研究室で大学院生の研究指導でした。このところ大学院生でも不登校になる学生が増えてきました。いろいろと話を聞いてみるのですが、その原因は本人にもよく分からないことが多かったです。それまでの学校生活で不登校になったことが無い学生が大半でした。
 私は、研究室に復帰できるかどうか1年以上様子を見ますが、復帰の可能性が極めて低いと感じたら、その時点で「人生に研究以外の道もたくさんある。20代のうちに自分の道を見つけて、社会人として何か役に立つ人間になって欲しい。また研究をやりたくなったらいつでも戻ってきても良いのだから」と声をかけ、彼らが社会へ一歩踏み出せるよう肩を押すことにしていました。

 現代を考えると、どんな学生、社会人でも疲れてしばらく休みたくなることがあります。そんな時には休学や休職のシステムがあります。ところが、小中高校の生徒にとっては不登校になったことが一生の傷になっていると感じています。フリースクールなどいろいろな対策が考えられていますが、社会の考え方を変えた方が良いと私は思っています。
 私は「30才までに社会に出て、税金や年金を納められる人に育てること」が社会のためであり、本人のためだと考えます。子供のために社会があると主張する人もいますが、私は「社会にとって子供はかけがえのない存在で、一人でも多くの子供達に将来社会を背負ってもらいたい」と考えています。少し厳しめになっても、その子の将来を考えて社会の一員になれるようにサポートするべきです。それを目指すことが親御さんや社会にとっても有益だと思います。そのためには、様々なチョイスを彼らに与え、ひとつでもクリアーできれば単位を与えて、卒業への道、就職への道を与えられるようにしてはどうかと思います。どこかの学校に所属しなくても、いろいろな学校で好きな授業を受けたり、職業訓練校で技術を身につけることや、自宅で作った作品を評価してもらうことで単位をもらえるシステムを作り、正式に卒業させてあげることが本人の自信に繋がると考えます。その間にいろいろな先生と出会い関係を持つことで、信頼できる先生に巡り会うことができるかもしれません。あせらず、そのチャンスを子供達に与えてやってはどうでしょうか?

 「将来、社会に出て税金や年金を納められるように育てることが大切で、いつまでも腫れ物に触るように過保護に接する」だけではダメだと思います。そんなきれいごとでは片付かないと言われるかもしれませんが、社会に役立つ人材が一人でも多く育つことが社会全体の願いのような気がします。今やっている取り組みやシステムを、「時間がかかっても社会のためになる人材に育てる」という視点で、もう一度見直すことはできないでしょうか?

 30才までと書きましたが、それも一つの目標でありそれ以上に時間がかかる場合もあると思います。ともかく焦って解決しようとしてはいけないと思っています。詳細な制度設計を考える必要もありますが、一人でも多くの若者が将来安心して生活できる社会になって欲しいと、みんな願っているのではないでしょうか?

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記事の執筆者と略歴

この記事の執筆者

片岡宏誌のホームページ 片岡 宏誌                 東京大学名誉教授(農学博士)                
                                               
1981年 東京大学 農学部 農芸化学科 卒業
1983年東京大学 大学院農学系研究科 農芸化学専攻 修士課程 修了
1986年東京大学 大学院農学系研究科 農芸化学専攻 博士課程 修了(農学博士)
1986年 Sandoz Crop Protection 社 Zoecon Research Institute(アメリカ・カリフォルニア州)ポストドクトラルフェロー
1988年 日本学術振興会 特別研究員(東京大学)
1988年 東京大学 農学部 助手
1994年 東京大学 農学部 助教授
1999年 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授
2024年 東京大学 定年退職
2024年 東京大学 名誉教授

コメント一覧 (2件)

  • 15日の個人演説会に参加させていただきました。穏やかな雰囲気のなかユーモアを交えながらの都政・教育などのお話は勉強になり貴重な時間を過ごすことができました。
    小学生から大学院生まで、不登校の理由やサポートは様々だと思いますが、少しでも未来が明るくなることを願います。
    片岡先生、関係者のみなさま ありがとうございました。

  • 関 様:
    コメントありがとうございます。
    ご指摘の通り、小学生から大学院生まで、不登校の理由やサポートは様々だと思います。また、それぞれの人によって状況も異なります。一方的ではなく、慎重に対応する必要があることも承知しています。その上で、少し大胆な考え方を提案させてもらいました。
    経験者などからの意見も参考に、今後具体的な方策を探れればと考えています。
    何か気づくことがあれば、また是非教えて下さい。

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