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ゼフを求めて(2)秋ヶ瀬公園

 秋ヶ瀬公園は約20年前に息子3人とミドリシジミを採集した思い出の地である。息子達も私も今でもその時の展翅標本を大事にもっている(正確には、妻が標本箱のパラゾールを時々交換しているので虫に食われなかったのだが)。6月12日に一度目、6月22日に二度目の訪問をした。初回は20年前にミドリシジミが乱舞していた場所を探したのだが行き着かず、二男は途中で甲虫を見つけて喜んでいた。最後は、近くにいたセミプロらしい方にゼフの観察場所を教えてもらい、ミドリシジミと思われるゼフが飛んでいるのを一匹目撃できた。

 6月22日に二度目の訪問をした。今回は20年前の場所の近くに行けたようだが、様子がすっかり変わっていて、近くにミドリシジミがいるとは思えなかった。そこで、前回の場所に移動して観察したが、タテハチョウか、ゴマダラチョウか、ミスジチョウの一種が飛んでいるだけで、ゼフらしきものはなかなか観察できなかった。この日は「埼玉県の蝶ミドリシジミをみる集い2024」が開催されていて、約100名の参加者が3グループに分かれて、関係者の人に案内されていた。行く手には我々が注目していたものとは別のハンノキがあり、頂端付近にミドリシジミが舞っていた。ミドリシジミが好むハンノキの木を見つけ出すことの重要さを再認識した。ただ、ゼフ採集用の長い柄の網でも届かない高さを飛んでいて、採集は不可能だった。関係者の人は「ハンノキ再生プロジェクト」などミドリシジミ保護にも力を入れている人達のようで、携帯イスに腰掛けている私に、現状や保護の方針などを話してくれた。

ハンノキ再生プロジェクト(2024年6月12日)
ハンノキ再生プロジェクト(2024年6月12日)

 私が見たことも含めて、秋ヶ瀬公園の状況と問題点をまとめると次のようなことになる。

1. ミドリシジミの全盛期は20年前までで、その頃は公園のほぼ全ての場所で観察できた。10年くらい前から減少が目立つようになり、観察できる場所も限られてきた。さらに、3年前から急に激減した。

2. 20年前から公園内に運動施設(野球グランド、テニスコート、キャンプ場)が数多く設置され、樹木の伐採が進んだ。

3. 長い桜並木や広い桜広場が新設(10年くらい前からのものか?)されていて、その広場は有償で花見用に貸し出されるシステムのようである。また、針葉樹と芝生を植えたキャンプ場やバーベキュースペースが数多く整備されていた。

4. 公園全体のハンノキが高木、老木化していて、食草に適した新芽を出さなくなっている。そのため、場所を限定して、1年前から高木・老木の一部を伐採して根元から脇芽が出るようにしたり、日当たりを確保する空間を作ったり、新らしい苗を植栽している。その活動は20年計画で進めようと考えているらしい。

 帰りの車の中で、昆虫(生物)好きの二男と想像を交えて話したのだが、3年前の激減の原因は、コロナ禍のために公園の手入れ要員が不足し、さらに、訪問者が激減したためではないかと推測した。それに合わせて桜に付く毛虫やスズメバチが急に繁殖したために殺虫剤を、人力で草刈りが困難になったために除草剤を使用したためではないだろうか?
 興味がない人には理解してもらえないかもしれないが、科学的に正しい知識をもって保護活動をしないとゼフ類は近いうちに次々と絶滅するだろうと思った。

桜並木(2024年6月22日)
桜並木(2024年6月22日)
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記事の執筆者と略歴

この記事の執筆者

片岡宏誌のホームページ 片岡 宏誌 農学博士
                                               
1981年 東京大学 農学部 農芸化学科 卒業
1983年東京大学 大学院農学系研究科 農芸化学専攻 修士課程 修了
1986年東京大学 大学院農学系研究科 農芸化学専攻 博士課程 修了(農学博士)
1986年 Sandoz Crop Protection 社 Zoecon Research Institute(アメリカ・カリフォルニア州)ポストドクトラルフェロー
1988年 日本学術振興会 特別研究員(東京大学)
1988年 東京大学 農学部 助手
1994年 東京大学 農学部 助教授
1999年 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授
2024年 東京大学 定年退職
2024年 東京大学 名誉教授

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