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最終講義を終えて(1)

 2024年2月17日に「最終講義」を終えた。これで教授としての公式用務は全て完了した。あとは「会議での挨拶」や「餅つき大会」で、いずれも必須ではない。いざとなればドタキャンも許されるが、体調も良いので多分こなせるだろう。そういえば、「教授室とフリーザーの片付け」が残っていた。心しておこう。
 「最終講義」には恩師の依田幸司先生をはじめ、卒業生もたくさん会場で参加してくれた。講義後の懇談会でいろいろな人と久しぶりに話ができてうれしかった。妻や息子達もその場になじんで楽しめたようだ。オンラインで参加してくれた人も80名以上だったと聞いている。オンラインで参加いただいた恩師であり、仲人でもある磯貝先生からは「最終講義の講評」が届いている。いつもながらの優しさと厳しさがあるコメントだった。多くの人に聞いてもらえたようで、わがままを言ってZoom同時配信をお願いして良かった。
 最初は嫌がっていた「最終講義」だが、やって良かった。周到に準備してくれた、発起人の永田君、東原君、野田君にお礼を言いたい。

生命棟前看板
生命棟前の最終講義の看板と筆者
最終講義の様子
最終講義中の筆者

 講義では感極まってきちんと話せなかったところがあったので、少しだけ追記しておきたい。

1.東大鈴木研究室と名大石崎研究室合同研究検討会(2)

 私が助手の頃までは、名大との合同検討会を開催していました。数日間寝食を共にし、信頼関係を築いて共同研究を進めることの大事さを教えてくれました。この時の溝口先生にはこれまで長く共同研究者になっていただきました。

東大鈴木研究室と名大石崎研究室合同研究検討会
東大鈴木研究室と名大石崎研究室合同研究検討会
2.小林勝利先生

 私の直接の先生ではありませんが、「カイコ除脳蛹のPTTH検定法」を確立された小林勝利先生です。先生は数あるカイコ系統の中から「日122x支115」というハイブリッド系統が除脳休眠蛹作製に適していることを見つけられました。普通のカイコは蛹になる前にPTTHが分泌されるために、蛹化直後に脳を提出しても人工休眠蛹にならず成虫化が進みます。小林先生の地道な研究によってカイコ除脳蛹を用いたPTTH検定法が確立されました。そのおかげで、私はPTTHを単離・構造決定できました。数多くの昆虫の中で、カイコからだけPTTHが精製できたのは小林先生のおかげだと思っています。

小林勝利先生
3.(恩師)鈴木先生と石崎先生

 やはり私がここまでやってこられたのは、指導教員でもあった鈴木昭憲先生と共同研究者でもある名大の石崎宏矩先生のおかげです。お二人からは、言葉だけではない「叱咤激励」をこれまで何度ももらいました。
 また、その周りの方々に助けられて、今日の「最終講義」の日を迎えられました。お一人でなく、お二人から指導を受けたことで、私は今のような研究者になれたと思っています。

(恩師)鈴木先生と石崎先生
筆者の恩師の石崎先生(左)と鈴木先生(右)
4.PTTHのモデル:Part3 ボンビキシンの最後

 現在では、ここに示すような2本のペプチドがジスルフィド結合で架橋したホモダイマー型の神経ペプチドが、ショウジョウバエを含めて全ての昆虫のPTTHだと考えられています。
 研究者は、新規性の高い研究に走りがちですが、注目度は低いが、次世代の研究者が安心してその基盤の上に立って研究できるようにすることも責務のひとつと考えます。ボンビキシンに関する研究はその一例になるかと思い、紹介させてもらいました。

PTTHのモデル[Part3]
カイコPTTHの構造
エリサンのPTTH活性[Part3]
エリサン除脳蛹に対するPTTH活性
5.最後のスライド

 小学校の卒業文集に「将来、蝶の研究をする研究者になりたい」と書いた覚えがあります。文集の実物を見たくて探したのですが、小学校の学区域のほぼ全てが浸水したために見つけだすことができませんでした。
 子供の頃の夢をかなえられた楽しい研究者人生でした。

幼少期について最終講義内で語る筆者
幼少期について語る筆者

と話す予定でした。

 研究裏話として書きたいネタはまだあるので、しばらくはこのホームページで紹介していこうと思います。また、時々きまぐれに雑感も書きます。

懇親会で花束を受け取る筆者
懇談会で花束を受け取る筆者
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記事の執筆者と略歴

この記事の執筆者

片岡宏誌のホームページ 片岡 宏誌 農学博士
                                               
1981年 東京大学 農学部 農芸化学科 卒業
1983年東京大学 大学院農学系研究科 農芸化学専攻 修士課程 修了
1986年東京大学 大学院農学系研究科 農芸化学専攻 博士課程 修了(農学博士)
1986年 Sandoz Crop Protection 社 Zoecon Research Institute(アメリカ・カリフォルニア州)ポストドクトラルフェロー
1988年 日本学術振興会 特別研究員(東京大学)
1988年 東京大学 農学部 助手
1994年 東京大学 農学部 助教授
1999年 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授
2024年 東京大学 定年退職

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