羽化ホルモン(EH)は、昆虫の最終脱皮である蛹の殻から成虫が羽化する行動を誘起するペプチドホルモンである。例えば、セミは早朝に、ある蛾は夕方に羽化するのは、EHが血液中へ放出されるタイミングが一日のうちいつか決まっているためである。EHは、ワシントン大学のJ. Trumanによって発見されたが、その構造が明らかになったのは1987年のことである。鱗翅目昆虫のEHは62残基のアミノ酸からなるペプチドである。
近年、EHは胸部に存在するインカ細胞で合成されるETH (ecdysis triggering hormone)の分泌を促進し、ETHが神経系に作用して脱皮(羽化も)行動を直接誘導することが示されている。また、ETHは脳のEH産生細胞に作用してEHの分泌を促進することも知られており、EHとETHが互いに分泌を促進し合うことで、脱皮(羽化)行動が一気に進むと考えられている。